マネーボール

Moneyball- The Art of Winning an Unfair Game

統計ネタの話で良く引き合いに出されているのを見ていて、いつかは読んでみたいなと思ってた1冊。野球も統計(というかデータ)も好きな僕にとってはドンピシャな1冊だったので読み始めたら止まらず、その日うちに読破してしまった。

話の概要は、貧乏球団オークランド・アスレチックスがいかに少ない軍資金でお金持ち球団ニューヨーク・ヤンキース並に勝ち星をあげられたのか説明している。お金さえあれば、高額の契約金を支払って有望なルーキーや他球団のスター選手を獲ってこれるが、アスレチックスにはそれができない。では、どうしたか?

従来の野球の指標であまり重要視されてこなかった部分に着目し独自の評価基準で選手を獲ってくること。つまり四球や出塁率を何よりも重要視したり、守備の出来不出来は勝ち星にあまり影響しないのでほとんど考慮しないなどだ。なぜこのような結論になったかと言えば、過去10年間のメジャーリーグの記録をデータ分析して出した結論だという。つまり野球も確率論で(ある程度は)説明できるという。

この方針には旧来の(勘と長年の経験で考える)スカウトたちには猛反発を喰らう。昔ながらのスカウトは、ホームランを量産するような華々しいルーキーをスカウトしようとする。そういった選手はほかの球団も当然狙っているので契約金は高額になる。それではアスレチックスには雇えないのでデータ派(ハーバード大出身でウォール街にいそうな人物など)はすこしワケありもしくはまったくもって無名の選手を候補に挙げてくる。そこで衝突が起きる。なにせ価値基準が違うからだ。

結局、データ派主導のもと、改革を進めた結果ヤンキースの3分の1の総年俸でヤンキースと同じくらいの勝ち星を挙げ、ポストシーズン出場も果たしている。投資対効果が素晴らしく良い結果になったという話。

読んでいてなんかいろいろな状況に置き換えられるなと思ってしまった。そうまさにサイト運営そのものじゃないかなと。大枚をはたいたキーワードが実はそんなに収益に貢献してなかったりとか、ちょっとした文言修正やレイアウト修正で著しくコンバージョンがあがったりとか。勘に頼る手法がいかに危険か思い知らされた気分だ。

しかし、マネーボールのデータ派がすべて成功しているかと言うとそうでもない。ポストシーズンに出場できるが短期決戦で勝てないのだ。年間で100数十試合やれば確率的な考え方もできるが、短期決戦ではあまりデータは役に立たない。むしろその選手の勝負強さとメンタル面も大きく影響してくるだろう。また守備面はあまり考慮しないと言ったが、それは現在収集しているデータが役に立たない(エラーは主観による指標)からであって、ピッチャーがボールを投げてバットに当たってから野手が動き出すタイミングなどそういった指標が獲れれば守備面も正確に評価できたりするかもしれないし、出塁率と長打率を合わせた指標、OPSもまだ正確に打者の価値を表していないと言える。

その点、サイト運営もそうで、データ!データ!と言っていれば平均化したサイトしか作れないと思う(データの収集の仕方にも依るだろうが。。。)。やっぱりクリエィティブというのそうゆうのを超えたものであって欲しいと個人的には思ったり。また現状、アクセス解析ツールで収集されていないデータのなかで収益につながる指標があるのかもしれない。これからPCに位置や照度、加速度などのセンサー類が標準的に装備され始めたらそういったものも活用できるかもしれない。

などといろいろ考えさせられるいい本だった。

なお、映画の方もいい。