第45回 金沢サロン:佐藤オオキ

nendo

のっけから佐藤さん、交通渋滞のため遅刻。ということで、主催者の黒川雅之さんが場つなぎでちょっとお話。

売れるってなんだろうね。

今年のミラノサローネでのLEXUSの展覧会も成功させ、ますます、評価を上げているnendo。売れちゃうと、どうしても同じ物、同じような表現スタイルになってしまう。安藤忠雄なんかそう、全部打ちっ放しのコンクリート建築。彼の作品集なんかはどのページも同じだ。それが、悪いかどうかは言っていない。戦略的にブレイクしようと思うのなら、同じモノをリピートしつづけ、個の作品ではなく、作品群で一つのメッセージに収斂する必要がある。だから、初期安藤作品にはレンガ作りの建築もあったけど、それは、彼の作品集に収録されていない。つまり、安藤はコンクリート、妹島和世はガラスと言ったように、イメージが固まってしまうけど、今回のゲストnendoはそれを感じさせないような期待をしている。非常に楽しみなデザイナーだ。

のようなことを言ってたら、佐藤さん登場。第一印象、デケー、ガタイいい。高校時代はボート部だったそうです。で肝心の講演内容は、自分の生い立ちを振り返りながら、作品について解説をしていく流れでした。

モノ < コト

小さい頃、ドラえもんばかり読んでいた。そこで、登場してくる道具もおもしろいんだけど、その道具を発端に、ストーリーが展開されていく、そうゆうのが自分が好きなのかなと今になっては思う。

ILLOIHA OMOTESANDO 東京都/表参道 フィットネスジム 2006.12

ジムの壁面をデザインするとき、ただグラフィック的なものを置くのはなく、なにか行為が誘発されるものを置きたいということで、額縁や鏡を壁に配置することでインテリア的な要素を満たしつつ、ジムという性質上、体を動かすためにその額縁などをロッククライミングできる仕様にした。

小さなデザイン・バタフライ効果

小さなモノが増殖していって大きなモノを変えるってのに興味がある。秋葉原なんかそう。はじめは電気屋街だったけど、そこに集まる人の趣味や興味が集まって、あのような街が形成されっていった。最初からあのような街を計画したわけではない。

NAOSHIMA STANDARD 2 香川県/直島 2006.10〜2007.04

NAOSHIMA STANDARD 2のサイン計画。予算もスケジュールもタイト(仕事が以来されたのが展覧会が始まる1週間前)な中、追い込まれながら考えたのが白いカラーコーン。安い、加工性も高い、丈夫、盗まれても、そんなに被害はないってことで採用。メインエントランスとなる宮浦港には625本、コーンを並べまくった。各アーティストのエリアのコーンに猫のしっぽが生えてたり、ディティールが違う風になっている。

日常中の非日常

日常中の非日常に興味を持っている

hie-hie for TV program「Top Runner」 2005.07

ガラスの表面をフロスト加工で曇らせて、水滴のような加工をすることで冷え冷えの水かのように思わせるグラス。トップランナー出演時にデザイン。

Alice’s Tea Party 東京都/新宿 for Lipton 2006.07

一見奥に長い部屋のように見えるが、壁紙や机、イスなどすべて遠近法に従って歪ませてある。

キャラ感

  • 既視感 → 感情移入
  • デフォルメ → わかりやすさ
  • 不完全 → 愛着

大学時代、絵を描くのが好きで、笑っていいともの芸能人の似顔絵を描くコーナーで勝ち続け、グランドチャンピオンにw (いいともに20回以上出たけど、タモリさんに名前覚えてもらえず) 似顔絵だけでは食っていけないので、貿易会社の通訳のバイトしてたら潰れた。けど、なんか会社任されて、6畳間の自宅でなんとか続けてた19歳。(中国向けに爪切り売ってたりした)院生になったら、今度はYahoo!BBがちょうど始まった頃で、自分の友達を紹介してたら、数百人規模の人材派遣会社っぽくなってた。

卒業。就職も決まってないので、とりあえず卒業旅行ミラノにいく。ミラノサローネに感動。建築家がフォークをデザインしたり、自由な雰囲気、ジュウナンなデザインに魅せられる。

nendo設立。

canvas 東京都/南大井 フランス料理店 2003.04

初めてのお仕事で喜び勇んでやったが、なにせ予算がタイト。まったくもってお金がないといことで、改築することもできないので、白いキャンパス地の布を200m買って店内、店外を布で覆いまくった。これが、雑誌でとりあげられるようになって徐々に仕事が増えた。

引出しの家 東京都/目白 個人住宅 2003.11

自分の家。なんでも必要な時に引き出せるようにして、その時々で空間を変えていこうというコンセプト。お風呂まで外に引き出せるようにしたけど、お湯の入ったお風呂は重く、まっすぐ進まない。→レールつける。今度は動き出したお風呂が止まらない。→ストッパーつける成功。なんてこぼれ話も。 まぁその他いろいろ作品紹介してもらい、思ったのが、ほんとにこの人は仕事を楽しんでいるし、楽しもうとしてるなと感じた。実際自分が、予算・スケジュールがない仕事を頼まれたら、ぶーぶー言ってそれなりのモノをしかつくれないと思う。

でも、この人は与えられた条件、制約をうまいこと、それこそだれも思いつかないようなアイデアで消化している点がすばらしい。ほんと話を聞いていてこっちまで楽しくなってきた。

これまで、nendoは最先端な技術を使ってクールなデザインをする人だと思ってたけど、非常に人間的にも魅力的な、一緒に仕事がしたいと思える人だと思った。