ブラック・スワン

不確実性とリスクの本質

なかなか読み応えのある本だった。上下巻で600ページ、といっても下巻の最後の100ページは用語解説や参考文献表記なので実質500ページ。

ブラックスワンとは前例の無いもの、起こりうるはずのないもの、でも実際に起こるとそれ以降はそれが当たり前のように扱われるのもの比喩で使われている。わかりやすい例として、世界中から1000人のサンプルをランダムで抽出した場合、皆の体重はさほど変わりない。最大値として小錦レベルのような人がいても全体の0.何パーセントだろう。ところが年収で考えた場合、サンプルにビル・ゲイツがいた場合はどうだろう。彼一人がで全体の99.9999… %を占めることになる。前者は『月並みの国』、後者は『果ての国』と著者は比喩している。

上巻はブラックスワンの例としていくつかのケースを紹介していて、純粋に読み物としておもしろかった。下巻は数字がちらほら出てきてちょっと難しいというか本書全体を通して、著者が頭がいいのか、哲学、文学、音楽、数学、経済学などバックグラウンドとした知識をバンバン出してくるので、下巻の用語解説は必須かな。時間がない人は下巻だけ読むといいよ。ブラック・スワンに対する対処法も書いてるし。

偉大なアイディア、言い換えると「ブランド・ネーム」は、点と点とを結びつけた人のものになる。なんとなく気づいていた人のものにならない。チャールズ・ダーウィンだってそうだ。わかってない科学者だと、ダーウィンが適者生存の法則を「発明した」なんていう。でも、適者生存の法則を口にしたのは彼が最初ではない。(中略) 最終的に、アイディアから結論を導き出し、そのアイディアがどれだけ大事か気づき、本当の価値を見出した人が勝利をつかむのだ。アイディアについて語ることができるのは、そういう人たちである。

最後に、ちょっと印象に残った言葉を引用して終わりにする。