アックゼロヨン・シンポジウムVol.1にいってきた

基調講演「ウェブを軸にしたコミュニケーション」

森田雄(アックゼロヨン・アワード2007実行委員会 委員長)

2004年に日本でウェブコンテンツJIS(JIS-X 8341-3)が制定。 それを機にアックゼロヨンアワードが開始される『アッ』はアクセシビリティで『ク』はクリエィティブ、『ゼロヨン』はウェブコンテンツJIS制定年の2004年を表している。

1999年のウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン 1.0(WCAG1.0)が勧告された頃はアクセシビリティ=『制限』といったネガティブなイメージが持たれていた。

なにもアクセシビリティに対応するということは障碍者だけに対応するという意味ではなく、ウェブリテラシーの低い人にも対応できる。

難聴ということは、騒音が大きい環境でのウェブ閲覧と見なせるし、文字が極端に小さいということはWiiやPS3のようなリビングでのテレビでのウェブ閲覧には適していない。と言ったように、環境や状況によっては健常者も障碍者のように状態になるということ。つまり、想像力を働かせなければならない。(WCAG1.0のイントロにも書いてある)

そこでアクセシビリティを対応させつつクリエィティブな表現もしていこう、それで初めて優れたコミュニケーションっての考えれるのではないだろうか。と言う考えのもとアックゼロヨンがスタートした。

アワードを運営するにあたって

モバイル部門も作るか、それとも違う対応で対処するか。 大規模サイトの運営の専門家も追加して今後は対応。 何度もアワードには応募できるので連覇も可能。 維持・運用の面も評価。

「アックゼロヨン・アワード2007に見るウェブの現在とこれから」

パネルディスカッション1 スピーカー:大重美幸,かわちれい子,矢野りん モデレータ:森川眞行(日本ウェブ協会理事長)

各審査員の評価点 文字が小さいとダメ(かわち) 読まれる文章も評価(矢野)

誰をターゲットとするのか?(三者)

ウェブはまだトライする段階であり、アクセシビリティを対応するは守りの対応と考えている。攻めの姿勢ももうちょっとあってもいいのではないだろうか?例えば、フルフラッシュのほうが受動的でアクセシビリティ的には良いのではと個人的には思う(大重)

各社スクリーンリーダーなどの仕様が統一していない段階で、そのすべての差異をウェブ製作者が対応するのは、あまりにも酷ではないだろうか。MacのVoiceOver機能などのようにOS側からのアプローチも考えたら良いのでないだろうか。そのために、私たち製作者はもっと意見を言わなければならない。(大重)

各審査員ごとに基準がバラバラで審査基準がしっかり共有されていない印象を覚えた。

「サイト構造と情報設計/インフォメーションアーキテクトのシゴト」

テクニカルセッション1 長谷川敦士(株式会社コンセント代表)

What’s Infomation Architecture

IA = ワイヤーフレームではない。

IAとはユーザーとコンテンツ・サービスのつなぎ方である

言葉の定義

情報アーキテクチャ(学問)
インフォメーションアーキテクト(する人)

インフォメーションアーキテクトとは?

データに潜む隠れたパターンを整理し、複雑さを明快にする人
ユーザーが自分の知識を獲得するための道筋を見つけられるような構造や地図を作る人

インフォメーションアーキテクトの仕事

情報の伝達・目的の達成
ユーザーの学習
更新・メンテナンス(ワークフローデザイン)
検証・効果測定

情報アーキテクチャの階層

ウェブ・エコシステム(ワールド・ワイド・ウェブ)
ハイレベル情報アーキテクチャ(エンタープライズ情報アーキテクチャ)
サイト情報アーキテクチャ(サイトストラクチャ サイトのディレクトリ構造に関して)
画面のアーキテクチャ

ハイレベル情報アーキテクチャ

ホールディングカンパニー・多言語対応
コーポレートサイト/ECサイト/ブランドサイトなどのサイト間での情報アーキテクチャ

応募作品の傾向とまとめ

サイトストラクチャレベルはOKだがハイレベルIAがあんまりな感じ。 サイト構造と画面設計が連動していない。情報アーキテクチャはインフォメーションアーキテクト1人が考えるものではなく各レベルで皆が考える時代

パネルディスカッション2 「アクセシビリティのこれから」

スピーカー:植木真,清家順,中根雅文 モデレータ:森川眞行(日本ウェブ協会理事長)

応募作品の傾向

静的ページはなかな対応できている。
動的ページはまだまだ対応できていないところが多い。

アクセシビリティの平均点は4点台。
WCAG1.0、JIS X 8341-3Xを満たせばそれでよいのか?
それは必要条件であって十分条件ではない。
どれだけ多くの人にその情報を伝えたいのかという姿勢が見てとれる。
最近標準で搭載され始めてきているスクリーンリーダーの見出しジャンプ機能(h1,h2,h3などのタグにショートカットで移動できる)は便利、ページ本文へのリンクはこれで代用できる。

キャプションと同じalt属性を使うな(2度読みになる)。

まだまだ出るアクセシビリティ

  • WAI-ARIA
  • WAI-AGE
  • WCAG2.0(年内中?)
  • JISは09年6月改正予定

ケーススタディ「受賞サイトの設計から実装・運用」 WIRED VISION

一日あたり7~10本の記事
翻訳者は20人くらい
ブロガーは10数人
週1でキービジュアルを変更
デザイナー1名、マークアップエンジニア1名、ディレクター1名の計3名で運営

MovableType 4 Enterprise版を使用(だけどエンタープライズ版の機能は使っていない)40のブログ、17000本の記事

テクニカルセッション2「フロントエンド技術(XHTML+CSS)の実装傾向」

大藤幹(ZSPC代表)

審査スタイル
古いブラウザでみるIE5
テキストブラウザで見る Lynx
文字サイズを大きくする Fx 3~4段階大きくする
XHTMLのソースコードチェック。自分の評価で9サイトしか9点台はなかった

アックゼロヨンアワード応募作品の分析 187サイト中
フルFlash 15%
テーブルレイアウト(フル) 25%
その他 60%
※2007年度以前にローンチされたサイトも含まれるので

海外のウェブ事情
テーブルレイアウトはなし
CSSハック使わない(使ってもClearfix)
日本ではあまり良いうわさの聞かない画像置換は普通に広く多く使われている
文字サイズ変更に対応している
ページ上部だけを画像で構成する、ソースコード量少ない
全体として特別なことはしない(シンプルなデザイン)

特別対談「コミュニケーションデザインの未来」

スピーカー:竹田茂(株式会社ワイアードビジョン 代表取締役),福井信蔵(アートディレクター)

とりあえず、ネットのない生活してた。焼き肉食べてた。ネット使うのはamazonで本買うか、google mapで焼き肉屋を探すかぐらい。(福井)

2000年,ビジネスアーキテクツ設立し、その頃は小規模サイトメインの制作
大規模サイト手がけ始め、ワークフローの重要さに気づく
企業経営の中でのウェブの存在意義
コンテンツから企画・提案 FUJIFILM FOREST FOREVER
最近はSIGMA DP1のブランディングなど手がける

まとめ:アックゼロヨンアワード受賞作に見る最近のウェブ制作の動向に関して

アクセシビリティはWCAG1.0,JISレベルはクリアして当たり前といった印象。この辺は、企業の社会的責任として当然守らなければいけないと思われる。そのレベルからフラッシュのアクセシビリティ、AJAXのアクセシビリティ、また年内中にも勧告されるであろうWCAG2.0への対応、それに伴う09年のJIS改正など、まだまだ対応しなければならない点が多い。また、ワイヤードニュースに見られる積極的なCMS活用は非常に興味深い。17000ページを3人でまわすコストパフオーマンスは驚異的。