サブスクリプション

「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル

最近、サブスクリプションサービスを提供する企業が多くなった。Amazon Primeで商品を配達してもらい、Netflixで映画・ドラマを見、Spotifyで音楽を聞くといったように、自分もいくつかのサービスを定期購読している。

本書の著者は、SaaSの雄Salesforceの創業期から参加して、自らもSaaS企業を立ち上げたZuora CEOのティエン・ツォ氏。前半の第一部はサブスクリプション経営に移行しているさまざまな業種・業界を解説。後半の第二部はサブスクリプション経営をするための考え方や戦略を解説している。

昔、Kaizen Platform(デザインリソースのSaaS)で働いてたとき「壁に棚を付けたいと思ったとき、ほしいのは電動ドリルじゃない。穴だ。」という話をよく聞かされた。結局、サブスクリプションというのは、モノや道具を売るというのではなくて、結果の共有なんだと本書を読んで改めて感じた。

物理的なモノを売ってしまえばそれで終わりだが、SaaS(Software as a Service)として提供しているのであれば、デジタル上でユーザーの行動がすべて把握することができる。ユーザーがなににひっかかっているのか、不満に思っているのか、これまでの経営では分からなかったことがより正確に知ることになり、サービスの改善につながる。カスタマーサポートがカスタマーサクセスと呼ばれるようになったのも継続的なサポートが顧客のサクセスにつながるのに重要な要因となっている。

サブスクリプション・サービスにおいては、必要なすべてのインサイトが自社のシステムの中に存在している

サブスクリプション経営をするからといって、万事安泰というわけではない。サブスクリション企業ならではの悩みがつきまとう。

  • 会員にとって、この新しいサービスの価値は何か?
  • 会員は私たちが提供しようとしているようなサポートを受けているか?
  • 会員はいつまで会員であり続けてくれるのか?
  • わが社の成長率はどうなるのか?外からはどう見えるのか?
  • 利用状態のどこを見れば、どこにリソースを重点配分すればよいかわかるのか?
  • どの会員がチャーン(解約・離脱)しそうか?

特に、このチャーンという言葉は先の企業にいたときによく聞いたものだ。みんなチャーン、チャーン言ってて最初はなんか可愛らしいなと思ったけど、要は解約の話だ。穴の空いたバケツにいくら水を注いでもたまらないと同じことである。

損益計算書

チャーンレートを低く抑えなければ、企業は利益を得られない。

そこで、Zuoraでは企業にサブスクリプション文化を根付かせるためにPADREというフレームワークを開発した。

  1. パイプライン(Pipeline):ウェブとソーシャルメディア、PRなど
  2. 獲得(Acquire):営業チーム、セルフサービス
  3. 導入(Diploy):実装・導入、カスタマートレーニング
  4. 利用(Run):アカウント管理、テクニカルサポート
  5. 拡大(Expand):アップセル、クロスセル、カスタマーエバンジェリズ1.
  6. 人材(People):採用と研修、キャリア開発
  7. 製品(Product):研究開発、ベータ版イノベーション
  8. 資金(Money):財務、法務

サブスクリプション経営は従来のようなモノを売るだけの経営とは異なる。それを社員全員が一人ひとりが意識しなければ成功に近づけないので、こういったフレームワークが必要になる。

当たり前だけど、じゃすべてのサービスをサブスクリション化すればよいわけでもない。経営する側も、利用する側もまだまだ理解が必要だなと感じた。