みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史

史上最大のITプロジェクト「3度目の正直

35万人月、4000億円をつぎ込んだIT業界のサグラダファミリア、みずほ銀行システム統合の話題の本を読んでみた。最近のWebサービス開発に携わっているまぁ普通の(?)開発者目線で言えば、カルチャーギャップがありすぎて前編はほぼ理解できないというか、なかなか頭に入ってこない。

第一部はみずの新システム『MINORI』が完成に至るまで経緯が書かれている。銀行はお金を管理しているわけなので、そのシステムも、そりゃ何重ものセキュリティなり冗長化なり必要なんだろうけど、そんなにお金かかる?そんなに時間かかる??というのが読んでいての率直な感想だろうか。あとベンダーとのやりとりや、銀行合併による各行の事務手続きの違いとか、あんまり馴染めないので興味なかったら読み飛ばしてもいいと思う。

2度のみずほ銀行大規模障害に関しては第2部、第3部について書かれているので、なぜ問題が起こったのか、について知りたい読者であれば後半を読めばいいだろう。

読んだ結果を言えば、経営層のITシステムへの軽視が招いた惨事としか言えない。合併による同じ銀行内で複数システムの存在や、システムの老朽化など、マンパワーでなんとか平常運転しているのに、それに甘んじて改修のための投資をしてこなかったのが原因なんだろう。

2000年代、米国の銀行はITシステムに既に数千億円の投資をしていたらしい。そのことは頭取などの経営者層にも頭に入ってたはずだ。事実、1999年みずほ銀行が統合された当時の記者会見では、ITへの投資というキーワードが頻繁に登場していたのにもかかわらず、その後、2度の大規模障害を起こし、金融庁からも業務改善命令を言い渡されている(業務改善命令って仮想通貨取引所以外でもうけるんだなと個人的に思ってしまったw)。

スタートアップのエンジニア視点からみれば、リファクタリングやアーキテクチャの変更など、エンドユーザーにはあまりメリットを感じにくい改善施策もCTOなりCEOが近い存在なので、言い続けていれば実行に移すことが可能だと思うし、そういった事例を見聞きしているので、やはり組織が大きくなりすぎて現場の声が届いてなかったのが問題なんだと思う。

あらためて、組織の未来をどこに向かうのか、どう動くのか決定するのがトップの仕事であり、それを間違えるととんでもない悲惨が待っているのだと理解した1冊だった。