ウェブユーザビリティの法則

改訂第2版

最近、よく見かけるので読んでみた。『ウェブユーザビリティの法則』というタイトルから堅いイメージかと思いきや、どちらかというと、『ウェブユーザビリティの心構え』的な読み物タイプの本だ。なので、~の時は~すべきであるみたいな厳格な法則とそれを裏付けるデータなどはほとんど出てこない。むしろ、親しみやすく分かりやすい、かつ短時間で読めるように推敲がなされ余分なものはそぎ落とされている。

自分はどちらかというと、売り上げ重視の経営層に対して、もっとユーザビリティの大切さを知ってもらうために説得材料となる数字を期待してたので、ちょっと肩透かしを食らった感じ。とはいえ、プルダウンの導入の是非についてのプロマネ、マーケ、プログラマ、デザイナーのいざこざは実際に自分も似たようなことは体験していたので、「あるある」とうなづいてしまった。

上記の例ではほとんど個人の好みや、ユーザーはこうだろうという憶測でしか議論なされず、宗教論争と同じようなものなので、その解決策として本書はユーザーテストを行うことを勧めている。

ユーザーの好みについて議論するのは時間の無駄であり、チームのエネルギーの浪費である。しかし、テストを行えば議論の緊張がやわらぐし、何が正しくて何が間違っているかという、個々の信念レベルではなく、何がうまくいき何がうまくいかないかという、実際的なレベルに議論を移すことができ、袋小路から抜け出せることが多い。

また、ユーザーテストに関しても肩の力を抜いて気楽にやればいいよとのこと。これは勇気づけられたというか、ちょっと安心した。『Webサイト設計のためのペルソナ手法の教科書』を読んだ時は、いろいろなテストがあってこんなん誰ができるんやろかと思ったけど(ペルソナとユーザビリティは違うけど)、グダグダ言ってないでビデオカメラもってユーザーを呼んで撮ればいいんだよと言ってた。

この点はWeb Directions East 08 カンファレンスでGuerilla Userbility Testingのセッションを担当したAndy Buddも同じようなことを言っていた。事実、Guerilla Userbility Testingの題名の通り彼らが開発したSilverbackというアプリケーションはMacBookさえあればすぐに、どこでもユーザーテストができちゃう代物だ。まさにゲリラテスト。

そんなわけで、ユーザーテストの重要さを気づかせてくれる良い本だと思ったので、ぜひデザイナー以外も読んでいただきたい1冊だ。