世界を変えるデザイン

ものづくりには夢がある

Webデザインは、決してPhotoshopやFireworksを使ってサーフェイスをデザインすることだけではないし、パフォーマンス対策やアクセス解析などしてても『デザイン』をしているという感覚が僕にはある。

Webデザインをしていてそれが役に立ったかどうかは、簡単なところでいえばPVで確認するだろうか、またはECサイトで言えば売上だろうか。でも、そのPV・売上のうち、僕のデザインはどれだけ貢献できたのだろうかという疑問が常にある。別に他のデザイナーがデザインしても、同じような結果になるのではないだろうかとも考える。だから、もっと詳しく知りたいと思いアクセス解析など勉強している。結局は、ユーザーの顔が見えないので役に立っている感がないのだ。

ほとんどの現代デザイナーの仕事は大多数の人々には何の影響も与えていない

デザインとは人の役に立つことだと自分の中で定義しているので、本書の冒頭で述べているこの言葉が突き刺さる。

  • インターネットにアクセスできるのは、世界の全人口の15%に満たない
  • アジアのインターネットの普及率は10%以下、アフリカでは3%以下である

上記はインターネットの世界においての統計だが、電気や水道などの当たり前のサービスを享受できているのも世界の人口の10%だけだ。本書で紹介されているデザインは、その10%の人たちのためのデザインではなく『残りの90%のためのデザイン』だ。それらはきらびやかなものでもなければ、美術館に飾られるようなものでもない。だが、確実に人々の生活に役立っているし、向上させている。

例えば、Qドラムは単なるドーナツ状のポリタンクだ。真ん中の穴にひもを通すことで転がして運べることができる。つまり、水運び作業の負担を軽減できるのだ。アフリカの地方部では、安全な水源まで数キロと離れていることが多く、しかもその作業は女性や子供の仕事らしい。また、重い水の入ったバケツを頭に乗せて運ぶため、体にも良くない。そういった問題に対する解決策がこのQドラムだ。

普段、僕らがデザインしているのは、もっと使いやすく、もっと便利に、もっと短くとかウォンツを満たす作業だ。でも、90%デザインは人間の基本的なニーズを満たす作業。僕が日頃抱いていたのはここかもしれない。本当に役に立っているのか?Web自体10%の人たちだけの世界(しかも日本語って考えるとさらに小さい)かもしれないけど、Webデザイナーと名乗っている以上、そのフィールドでがんばっていくしかない。その中でより多くの人の役に立ちたい。

いちデザイナーとして、多くの刺激を受ける本かと思った。世界を変えると言わないまでも、自分の周りの世界ぐらい自分のデザインで変えたいものだ。