自分を見違えるほど変える技術

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マシュマロを食べたら終わりなのか?

有名なマシュマロテストがある。小さな子にマシュマロを与えて15分間一人で我慢して食べなかったらもう一つマシュマロをあげるという内容のテストだ。目の前においしそうなマシュマロがあるのに食べれないというのは小さな子にとってはなかなか厳しい試練だろう。

このテストにより、好きなモノを後にとっておく能力があるかどうかを見極められる。また、その後の追跡調査でマシュマロを我慢できた子は我慢できなかった子に比べて、いい大学やいい会社に就職するなど社会的成功をおさめる率が多いということらしい。

このTED動画は5分くらいしかないので、『我慢する能力は大事だよー』ということ以上のことは何も言ってくれない。いったい、マシュマロは食べてしまった子が成功するためにはどうしたらよいのか?に関して、残酷にも何も言及がない。

『意志が弱い』という思考停止

このマシュマロテストは意志の強さが、いかに大事か紹介するための事例になってるような気がする。それと同時に『マシュマロを食べてしまう僕はダメな子なんだ、意志が弱いからだ』という免罪符を与えている。

それって思考停止だよねってことを本書は教えてくれる。本書で紹介されている追加の実験では、マシュマロを食べないようにするテクニック(マシュマロを見ないとか歌って違うことをするとか)を教えた子はそうでない子に比べてマシュマロを食べる確率が減ったという。

結局、そのテクニックを知ってるかそうでないかで、マシュマロの呪縛から、簡単にってわけでもないが、解き放たれる可能性はあると教えてくれる。

大人の場合も、そうである。僕は甘いものが好きなので、たまにアイスクリームなどを食べてしまうのだけど、その度に、『あー、32なのに今週またチョコモナカ・ジャンボ食べちゃったよ、なんて意志が弱いんだ』と通常ならそこでため息をついて終わりだ。

しかし、思考停止しない場合は、ではなぜ、アイスを食べてしまったのか?ちょっとコンビニにお金を下ろしたついでにうっかり購入してしまった。なら今度からは銀行でお金を下ろせばいい。そんな具合に打開策を講ずることができる。

本書ではそういったテクニック・事例を、個人・社会・構造レベル x モチベーション・能力の6つのカテゴリーで分解して解説している点がおもしろい。

6つのカテゴリーで解説しているが万人に当てはまるようなテクニックはない。そこはトライ・アンド・エラーで対策を講じつづけ、自分にあった対応を探さなければならない。その辺がとてもエンジニアリング的だと感じた。とりあえず『意志が弱い』からという思考停止になりがちな自分にとってはハッとさせられる一冊だった。