デザインが日本を変える

~日本人の美意識を取り戻す~

高校の政経担当の先生が、『マツダ車はいいぞ〜』とベタ褒めしていたのをナゼか今でも思い出す。それ以来、車を買うことがあればマツダ車にしようと密かに思っていたが、東京に出てきてしまったので、いまだに車を購入する予定はない。

そんなマツダ車のデザイン部長さんの話。なかなか大層な本書のタイトルだが中身も熱い。デザインへの熱い想いが重いw それもそのはず2009年に米企業傘下から外れ、デザイン部門のトップも久しぶりに日本人(著者である前田育男氏)になったからだ。

前任のオランダ人デザイン部長は、マツダは日本の自動車メーカーだから日本的なデザインにしようということで、枯山水の砂紋を車のデザインに取り込もうとするなど、いささか安直な考えで、前田氏と何回か対立していた。そういった経緯から自分がその立場になったとき、はじめてその問題の難しさに気づいたという。日本らしさとはなにか、はてはマツダらしいとはなにか?

長い間考えぬいた結果、魂動デザインというコンセプトをひねり出す。なんか暴走族っぽい当て字だなと本書を読む前は思ったけど読み通してみると、なるほど言い得て妙とはこのことである。


図版:【MAZDA】クルマに命を宿す 、デザインの力。 Vol.01

また、そのコンセプトを表現した、ご神体と呼ばれるオブジェもクレイモデラーたちが、自主的に作り、「魂動デザイン」とコンセプトともに、マツダデザインの進むべき方向性が明確になった。その後はワールド・カー・オブ・ザ・イヤーなどで受賞するなど華々しい結果となる。

個人的に興味深かったのは、それまで優秀なクレイモデラーとは、デザイナーの描いたスケッチをクレイを使って完璧に” 再現 “することだと思われていたフシがあったが、「魂動デザイン」とは何かを開発サイド全員で考え始めたことによって、クレイモデラーからデザインの提案がでてくるようになったという。

これはUIデザイナーとフロントエンドエンジニアの関係にも似てるなと読みながら、納得した。どこの世界も縦割りの組織では、良いものは作れない。明確なゴールと情熱あるリーダーがいると、ここまで組織・会社は変われることができるのかと改めて気づかされた。デザインに興味なくてもモノづくりをしている人すべてに読んで欲しい一冊だ。