【翻訳】移民は安価な労働力のためではなく優秀な人材の確保のため

Immigration is about talent, not costs

Yuri Sagalov Original:Immigration is about talent, not costs)by Yuri Sagalov

先週、BusinessWeekは『テックワーカー不足問題は本当は存在しない』という記事を出した。FacebookやMicrosoftのような企業は実際のところ低賃金労働者を探しているだけだと、テックワーカー不足問題に異論を唱える識者に彼らはインタビューをしていた。

一般的な認識として、人手不足である証拠はまったくもってない、とラトガース大学で公共政策の教鞭をとっているHal Salzman教授は語っている。彼らは自分たちが提示するサラリーでの働いてくれる労働者を見つけることが出来ないだけかもしれない。しかし、私が半額のテレビを見つけられないと同じようにそれが人手不足として認められるとは思わない。

FacebookとMicrosoftは低賃金労働者を多く雇いたいだけという事実に私たちは異論はないと、Salzman氏と共同著者であるDaniel Kuehn氏は答える。またUrban Instituteの助教授の調査によると『しかし、それは人手不足とはみなされない』

ほんの数時間後、Voxは『テック企業のインターンはあなたよりも稼ぐ?』という記事を出した。彼らはあけっぴろげにいくつかのIT企業の給料をツイートしていた。なかには高額のもあったし、思ったほどでもないものある。

Tiffany Zhong Friend made a list of top internship offers ― Tiffany Zhong on Twitter

低賃金労働者論争の話はここでおしまいだ。

コスト削減でなく優秀な人材確保のために雇う

私はアメリカで事業を始めるために引っ越してきた創業者のひとりである。長い間、移民政策について特に関心はなかったが、最近の出来事がそれについてもう一度考えるときが来たようだ。このタイミングで私の考えを共有することが適切かと思う。

私は共同創業者とAeroFSをスタートさせるためにカナダからアメリカ合衆国に来た。私たちはベンチャーキャピタルをたて、従業員を雇用し(現地採用・外国人採用両方)、ここカリファルニアである程度の成功を手に入れた。

AeroFS設立時、H1-B(特殊技能職:プログラマー等が該当する)ビザの上限数は問題ではなかった。一般的に、H1-Bの申請期間は毎年4月から始まり10月までエントリーできる。2010年に私が申請したとき、ちょうど10月にその年のビザを申請したが、12月には申請が受理され、無事に2011年初頭から米国で働けるようになった。

数年後、私たちは外国人と現地人を雇用した。もちろんその目的は良い人材を獲得するためであり、上記で述べられているような安い労働力という観点は一切なかった。事実、H-1Bビザの制限により高度な技術を持った人材はアメリカ政府によって労働者を雇う州の賃金相場に基づいて厳格に賃金が決められるので、先のトピック自体意味のないものとなる。

いくつかの理由によって、大抵の場合、外国人労働者の採用には多くのコストがかかる。

  • 面接のための交通費や宿泊費
  • 移民手続きにかかる費用(最高$8000の法的手続き費用)
  • 引越し費用の補助(運搬コスト、赴任手当等)

つまり、現地採用したほうがコストは低く抑えられて好ましいと考えるかもしれないが、すべてのエンジニアは全員同じ能力なわけがあるはずはないし、優秀なエンジニアは世界的に見ても少ない。したがって、外国で優秀なエンジニアを見つけた場合、なんとしても彼らにオファーを出し、雇うよう努めなければならない。

しかしながら不幸にもこれらは昨年から変わった。私たちは、まずH-1Bの定員について確認しなければならない。

H-1Bビザの定員数の推移

H-1Bビザの定員65,000人は、1990年の議会で移民法の一部として導入され、翌年度の1992年度(1991年10月1日)より施行。最初の5年間は定員に達しなかったが1997年度に初めて定員に達し翌1998年度もITブームの影響で定員を達した。

移民需要の高まりにより、アメリカ政府は米国の競争力及び労働力改善法(ACWIA)を1998年に承認した。これにより1999年度と2000年度のH-1Bビザの定員は115,000人まで一時的に拡大された。

2番目の法、21世紀における米国の競争力法(AC21)は2000年に承認され、H-1Bビザの定員は195,000人まで2001年度から2003年度まで引き上げられた。

この一時的な増加は2004年度までで、それ以降は195,000人から、また65,000人に戻った。

私たちがしなければいけなかったこと

アメリカ経済が回復するにつれて、私たちは候補者のためにH-1Bビザを獲得するのはコイン投げのようなものだと理解した。2013年において、政府が申請受け入れをストップするまでに65,000人の定員に対して124,000人の申請があった。それも4月が始まって、たったの5日間でだ。2014年は65,000人の定員に対して172,000人の申請があった。申請にあたっての時間的コストや候補者をリクルーティングする労力を考えてみて欲しい。そのようなコストを支払っても、いざ彼らを雇うときに私たちには、なにもできることがないのだ。

あるケースにおいて、私たちはこの宝くじに外れた。私たちのH1-Bの申請書は封も明けられないまま返却され、残ったのは私たちが必要としている分野で素晴らしいエキスパートである候補者だけである。しかし彼は合法的に私たちの会社では働けない。

私たちはこの候補者を犠牲にはしたくなかったので代替手段を模索し始めた。O-1(科学、芸術、教育、ビジネス、またはスポーツの分野で「卓越した能力を有する者」に発給される)ビザは彼に適用できるだろうか、いや資格を満たしていない。グリーンカード抽選は?当てにならない。他に使えそうなビザはないだろうか?悲しきことにない。彼はフランス人だ。そのため、カナダ人専用のTNビザ、オーストラリア人専用のE3ビザも該当しない。

最終的に、新しい支社を違う国で立ち上げ、そこで候補者を雇い入れるしか方法がないことを理解した。

それが私たちがやったことである。新しい従業員とのコミュニケーションのために、出来る限りアメリカから近いカナダに子会社を設立した。彼が最初の社員になるが、たぶん、最初で最後とはならないだろう。

これまで私たちは会社を運営してきて、コスト削減のために採用に関する決定がおこなわれたことはない。私たちが誰かを雇用しなければならないとき、私たちは採用する。なぜなら、彼らがどこの国の出身であろうが、私たちが求めるスキルを持って面接に臨んでいるからだ。

プロフェッショナルな外国人労働者がアメリカで働けないことは、単純に彼らが私たちの国の代わりに他の国で貢献することを意味する。

テックタレントの獲得競争は現実に今まさに起きているのである。


カナダ人でベイエリアでAeroFSという会社を経営しているYuri Sagalov氏の記事。翻訳にあたっては氏の同意を得ている。Hacker Newsのスレッドを見てもらえれば分かるが、結構盛り上がってたので翻訳してみた。

アメリカで働くことは非常に難しいとは聞いていたが、やっぱり、そのようだ。アメリカの就労ビザが欲しければ留学せよとの記事を見たことはあるが、そんな金持ってない。

記事で代替案と提示してある方法としてFacebookもそのような事をしている。そう考えると、ベストなのは北のシリコンバレーであるバンクーバーなのであろう。アメリカほどではないにしろ、カナダでの就労ビザ獲得も難しいけど。